「定性調査」と「定量調査」で異なる使用目的とタイミング

「定性調査」と「定量調査」で異なる使用目的とタイミング

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「定性調査」と「定量調査」、一般的な2つの調査手法ですが、どのように使い分けるかを正しく理解しているでしょうか?本記事では、研究や調査プロジェクトにおけるそれぞれの調査の使用目的やタイミングなどについて、具体的にご説明します。

多くの調査プロジェクトでは、定性データと定量データの組み合わせが必要になると思われます。それぞれの割合は、達成する目標によって異なります。これらのアプローチは対照的ですが、その結果はバランスが取れています。

定性調査と定量調査のメリット

使用するべきタイミング

『定性調査』 

定性調査は仮説を立てるために用いられます。あまり知らないトピックについて、より深い情報が必要な場合、定性調査はテーマを明らかにするのに役立ちます。そのため、定性調査は定量調査の前に実施されることが多いです。これにより、トピックに関する基本的な理解を深め、相関関係や因果関係に関する仮説を立て始めることができます。

『定量調査』

定量調査は、仮説の検証や確認に用いられます。一般的に、定性調査は定量調査に情報を与える役割を果たします。検証可能な仮説を立てるためには、トピックについて十分な理解が必要です。定量調査は高度に構造化されているため、まず、パラメータが何であり、実際にどの程度変動するかを理解する必要があります。

具体的には、パラメータは仮説を検証するためにテストをしたい要素です。例えば、COVID-19が企業のオフィススペースに対する考え方を変えるだろうという仮説に対して、COVID-19前後の在宅勤務者の割合、保有するオフィススペースの総面積、経営幹部による不動産支出の期待値などをパラメータとして設定することができます。また、これらのパラメータの変動幅も知りたいと思うでしょう。上記の例では、オフィススペースの標準的な床面積や不動産支出額を知っておくことで、関連性と質が高く、実行しやすいデータを収集するための回答選択肢を作成することができます。

 

調査方法

多くの場合、定性調査は少ないサンプル数で行われ、多くのオープンエンド(自由回答)の質問が含まれます。この手法の調査の目的は、「なぜ?」を理解し、意思決定の背景にある思考を明らかにすることです。このタイプの調査を促進する最善の方法は、1対1のインタビュー、フォーカスグループ、時にはサーベイ(アンケート調査)です。インタビューとフォーカスグループではフォローアップの質問ができるため、特にインサイトに富んだ回答に対してより深く掘り下げることができるという大きな利点があります。

反対に、定量調査は、幅広い回答者からの視点を収集することができる、より大きなサンプルサイズを対象としています。常に必要というわけではありませんが、統計的に有意な結果を得るために、十分にサンプルサイズを大きくすることもあります。このタイプの調査を促進する最善の方法が、サーベイや大規模な実験です。

 

分析

当然のことながら、この2つの異なるアプローチは、異なるタイプのデータを生成し、異なる方法で分析する必要があります。

定性データの場合、最終的に得られるデータは主にテキスト形式になります。テキストデータに目を通し、何度も浮かび上がる重要なテーマを探します。このタイプの調査は、プレゼンテーションや報告書で使える引用文を生み出すのにも適しています。引用文は、感情を伝えたり、強い印象を与えたりするための有力なツールになります。

定量データの場合、最終的に得られるデータセットは、Excel、R、SPSSなどの統計ソフトウェアを用いて分析することができます。この定量データを作成する質問には、格付け/順位付けの質問、単一回答、複数回答、マトリクス形式の質問など、さまざまなタイプが挙げられます。これらの質問タイプは、平均値、範囲、成長率、変化率、最小値/最大値、さらには長期的な傾向分析のための時系列データを見つけるために分析できるデータを生成します。

 

混合研究法のアプローチ

調査を一つのアプローチに限定する必要はありません。定量データと定性データの両方が必要な場合は、両方を収集します。さらに、一つの調査手法で、定量データと定性データの両方を収集することもできます。アンケート調査では、「なぜ?」というオープンエンド(自由回答)の質問と、データに関連するクローズドエンドの質問の両方を実施可能です。インタビューやフォーカスグループのような非構造化形式でも、分析可能なデータを収集するために数値的な質問をすることができます。

ただし、注意が必要です。定性的なテーマは一般化できる場合がありますが、定量データに関しては、サンプル数が非常に少ない場合には、一般化することは危険です。例えば、企業が特定のソフトウェアプラットフォームを好む理由は、3〜5つの主要なテーマに分類される可能性がありますが、そのプラットフォームにどれだけの金額を費やすかは、非常に流動的でもあります。

 

覚えておくべき重要ポイント

調査しているトピックに馴染みがない場合は、定性調査が最初のアプローチとして最適です。調査を深めていくうちに、特定のテーマが浮かび上がり、仮説が立てられるようになります。その後、定量調査を行うことで、より大規模なデータセットが得られ、それを分析することにより、調査の初期段階で立てた仮説を確認したり、否定したりすることができます。最も重要なのは、これらの2つのアプローチが相互に排他的ではないことです。調査プロセスを通じて、テーマとデータの両方に目を向けることができます。ただし、トピックの理解度に応じて、どちらか一方に重点を置くことになるでしょう。

 

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筆者について

ウィル・メラー(WILL MELLOR), GLGサーベイチーム ディレクター
北米のフィナンシャルサービスを援助する上級のプロジェクトマネージャで構成されたチームを牽引。チームは、原案から最終的な成果物まで、エンドツーエンドでサーベイの実施から納品までを管理。サーベイ設計と調査に加えて、GLGのインターナル・メンバーシップと消費者に関する有識者でもある。前職は、経済系コンサルティンググループのヴァイスプレジデントとして、パブリック、プライベートセクターのクライアント向けのエコノミックインパクトモデルの設計を担当。国際ビジネスおよびファイナンスで学士号、応用経済学で修士号を取得。


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